企業年金について
まずは国の年金制度の理解が不可欠
今回は企業年金について整理しておきましょう。企業年金を理解しようとすると、やはり、老後に受け取る年金制度の仕組みを把握しておく必要があります。
日本の年金制度は3階建てと言われますが、まず、日本の年金制度のベースとなる1階部分が「国民年金」です。これは20歳以上のすべての人が共通して加入する年金制度で、「基礎年金」といわれますね。すべての国民(もちろん受給資格を満たしている人)に給付する共通の公的年金と考えるといいでしょう。
次に、会社員や公務員が加入する年金制度で2階部分となる「厚生年金」です。被用者年金とも呼ばれますね。そして3階部分として、「企業年金」という会社独自の年金制度があり、この他に自営業者や農業者には基礎年金を補完し上乗せ給付を行う制度として、iDeCo・国民年金の付加年金や国民年金基金、農業者年金等があるのです。
この整理が分かりやすいと思います。
そもそも企業年金というのは企業が従業員のために用意した退職給付制度ですよね。 この記事を書くために私も調べたのですが、 この退職給付制度の源流とは、江戸時代の商家で使用人の独立時などに行われた「のれん分け」にあるといわれているそうです。明治期以降、熟練労働者の足止め策の一つとして定年退職時に一時金を支給する退職一時金制度が普及・慣行化していき、企業年金の原型ともいえる「厚生年金基金、適格退職年金」などが創設されていきます。
ただ、皆様ご承知のとおりバブル崩壊などを経て、少子高齢化の進展とか、経済・運用環境の低迷などあり、企業年金を取り巻く環境は大きく変動し、適格退職年金は廃止、厚生年金基金は再編(正確には、厚生年金基金は新設が認められなくなり、健全な基金は厚生年金基金としての存続が認められているものの、解散または他の企業年金制度等への移行を促されることになっている)されてますね。
そして、企業年金は現在の形成になっていて、
となっています。
確定給付企業年金(DB)は、給付額があらかじめ決まっていて運用が悪化した場合には企業側が積み立て不足を負担する仕組みですから、日経が報じていますが、長寿化にともない、企業側の負担が大きくなったしまうようなことも発生するのですね。
選択制確定拠出年金では厚生年金の受給額が下がるというデメリットも
他方、確定拠出企業年金(DC)は、従業員が自ら運用し、運用次第で給付額が変わります。なのでリスクは従業員が負担することになりますね。DCの掛け金ですが、基本は企業が拠出し、従業員が自己責任で運用するのですが、ここに、「選択制確定拠出年金」「マッチング拠出」があるという整理になります。
選択制確定拠出年金というのは、よく「ユニクロ型」とか呼ばれます。選択制確定拠出年金は、その名のとおり選択制ですから「希望者のみ」加入者とすることができるので、社員の意思を尊重できる制度です。給与を原資に掛金が拠出されるため、新たな掛金の財源は不要ですし、何よりいいと言われるのは、社会保険料が削減できるということでしょうか。
ただ、デメリットは社会保険料が削減されるので、老齢厚生年金の受給額が下がります。
マッチング拠出という制度は、企業型確定拠出年金の加入者が企業掛金に、自分で掛金を上乗せできる制度です。 ただ、選択制確定拠出年金のように給与を減額して拠出するわけではないので、社会保険料の削減ができません。自分で上乗せした掛金は所得控除の対象ですから、所得税、住民税の節税はできますね。
以上です。